京都の街歩きが楽しくなる不思議で可笑しな恋物語

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京都祇園の夜景

もう10年以上も前の話になりますが、休みの日にふらっと立ち寄った本屋で、妙に気になる表紙の小説を見つけました。

大正ロマン的な雰囲気が漂うレトロなイラスト。どこか京都っぽい、懐かしさと遊び心が同居するその表紙に惹かれたのです。読んでみると、その印象は間違っていませんでした。何気ない日常の風景に、不意に現れる非日常。ページをめくるたびに、想い出のある京都の通りや路地裏の風景が蘇り、久しぶりに「また行きたいな」と思わせてくれる、そんな物語です。

目次

舞台は京都、だけどひと味違う

この物語の舞台は、言わずと知れた京都。だけど、そこに描かれているのは、観光ガイドに載るような整った風景だけじゃありません。大学のサークル活動、先斗町の夜、謎の骨董市、そして学園祭…。観光じゃない街の空気感や、独特な雰囲気が、どこかリアルで、そして妙に心に残ります。

登場するのは、「黒髪の乙女」と呼ばれる自由奔放な女性と、彼女に密かに思いを寄せる「先輩」。この先輩、どうにか乙女に振り向いてもらおうと、あの手この手で“偶然”の出会いを演出しようとしますが、ことごとく空回り。もう本当にヘタレなんです。読んでいて、「いやいや、素直に言えばいいのに」とツッコミたくなるのですが、それがまた微笑ましい。

そんなふたりが歩く京都の夜は、現実とファンタジーの境界があいまいな世界。歴史ある現実の街並みの中に、突如として三階建ての電車が走ってきたり、ダルマが空から降ってきたり。でも次の瞬間にまた現実の街に引き戻される。そんなあり得ない光景なのに不思議と違和感なくなじんでしまうのは、京都という街が元々どこか浮世離れした雰囲気をもっているからなのかもしれません。

乙女と先輩が織りなす摩訶不思議な時間

京都祇園の夜景

この物語の魅力は、なんといっても“自由すぎる乙女”と“奥手すぎる先輩”の関係性です。乙女は、興味を持ったものには全力で飛び込み、人見知りせず、夜の京都を元気いっぱいに駆け回ります。一方、先輩はというと、自分の気持ちをなかなか伝えられず、ただ遠くから乙女を追いかけるばかり。

このアンバランスなふたりの様子が、それぞれの視点から交互にテンポよく描かれていて、読んでいてニヤニヤが止まりません。決して甘ったるい恋愛物語ではないけど、読み進めるにつれて、なぜか、ふたりの距離が少しずつ近づくように応援したくなります。

さらに、乙女が縦横無尽に駆け巡る京都の街は、どこか現実と夢の間のようだし、彼女が訪れる古本市や飲み屋、下鴨神社の糺の森など、実在の場所がたくさん出てくるのも、京都好きにはたまらないポイント。たとえば、四条大橋や先斗町のような馴染みのある場所が、まるで異世界の入口のように描かれる場面もあり、京都に詳しい人ほど「あの場所がこうなるか」と思えるはず。

現実と幻想が自然に入り混じるこの物語は、肩ひじ張らずに読めて、「こういう小説もたまにはいいな」と感じさせてくれます。私も最初にこの小説を読んだ当時は、作者も知らなかったのですが、この独特な世界観にはまってしまい、今では大好きな作家のお一人です。

今回の小説は・・・

今回取り上げた小説は、森見登美彦さんの『夜は短し歩けよ乙女』。京都を舞台に、自由奔放な女子学生と、彼女に恋する男子学生が繰り広げる不思議でコミカルな青春恋愛ファンタジー小説。現実と幻想が入り混じる世界観が魅力の一冊です。

ちょっと変わった京都の旅気分を味わいたいなら、まずはこの一冊から。

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