「ちょっと奇妙で変わった物語を読んでみたいな」と思うことはありませんか?
そんな時にピッタリなのが、万城目学さんの作品『鴨川ホルモー』
物語の舞台は京都、そして物語を動かすのは「ホルモー」という奇妙な競技です。
笑いあり、感動あり、ちょっとドタバタした不思議な世界が広がる青春エンターテインメント。
この作品の魅力を、ぜひ知ってください!
『鴨川ホルモー』はどんな小説?
この作品は万城目さんのデビュー作で、2006年に第4回ボイルドエッグズ新人賞を受賞した作品です。
話題となったこの作品は、その後に実写映画化、舞台化もされています。
『鴨川ホルモー』あらすじ
『鴨川ホルモー』は、京都の大学に入学した主人公・安倍くんが、同期生と一緒に半ば成り行きで加入したサークル「京大青竜会」を中心に展開される物語です。
安倍くんも他の同期生も、何をするのかさっぱり見当もつかないままに加入したこのサークル、実は京都の4つの大学が会して毎年行われる、謎の競技「ホルモー」を行うことが活動内容なのです。
「ホルモー」とは、なにやら怪しげな呪文を駆使して小さな鬼(オニ)を操り、戦略とチームワークで戦う奇祭のような競技なのですが、その内容は安倍くんたち新入生には何も知らされないまま。
そして2か月が経過しようとしていた、祇園祭宵山の日。
ついに「ホルモー」の秘密が明かされます。場所は四条烏丸交差点。
ここから物語が一気に盛り上がります。
『鴨川ホルモー』レビュー
『鴨川ホルモー』が多くの読者を引きつける理由は、その唯一無二の世界観と、笑いと感動が絶妙に織り交ざったストーリー展開、そして何より個性あふれるキャラクターたちの存在にあると思います。
物語の背景にあるリアルで魅力的な京都の風景と、そこに隠された奇妙な競技「ホルモー」という設定。
さらに、そんな非日常の中で奮闘する登場人物たちの姿です。
ここからは、『鴨川ホルモー』を楽しむうえで、見逃せない3つの魅力を紹介します。
リアリティに幻想が溶け込む
『鴨川ホルモー』の最大の魅力の一つは、京都という美しい街並みと物語の幻想的な世界が見事に交わっていること。
鴨川沿いや三条大橋、八坂神社、京都御所など、京都の名所が数多く登場するのですが、その描写がリアリティに富んでいるので、「まるで自分がその場にいるかのような」感覚を味わえます。
「ホルモー」が始まる祇園祭のシーンなんか、人でごった返す街の賑わいや、ちょっと蒸し暑く感じるような空気感が伝わってきます。
でも、この作品で描かれる京都の風景は、単なる背景にとどまらないのです。
背景に描かれるのは、観光客や地元の人が行き来する普段と変わらない京都の風景。
その街並みの中に、突然「ホルモー」という奇妙な非現実の世界が放り込まれるのですが、その非現実の世界を、普段通りに観光客が興味深げに眺めたり、地元の人が素通りしたりするのです。
奇抜さに驚きはするものの、普通にそこに存在しているかのように。
この現実と非現実が入り混じった絶妙な描写によって、「京都」という舞台の魅力が引き立てられて、「ホルモー」も現実味を帯びる、「京都にはこんな奇妙な競技が本当に隠れているのかもしれない」と思わせてくれます。
妄想の中に描かれる笑いと友情
物語の中心に描かれる、奇妙な競技「ホルモー」の設定そのものが非常にユニークです。
ホルモーは、呪文を唱え、自分の分身とも言える鬼(オニ)を戦わせる不思議な競技。
そんな突拍子もない競技に大学生たちが真剣に取り組む姿は滑稽で、思わず笑える場面が満載です。
ホルモー自体が非現実で、ドタバタしたコメディータッチな妄想ですが、この物語は単にコメディーでは終わりません。
物語が進むにつれ、笑いだけでなく、登場人物の成長や葛藤、仲間との絆が描かれ、感動すら覚える場面も登場します。
個々のメンバーが、仲間とともにホルモーでの勝利を目指し、自分の限界を超えて挑む姿すなんかは、古い青春ドラマみたいですし、ホルモーを通じて、それぞれが自分自身の価値や生き方を見つけていきます。
笑いだけでもなく、ちょっと青臭さいドラマ仕立てだけでもなく、お涙頂戴的なものだけでもなく、丁度いいバランスが保たれたストーリーで、この作品を「読んで良かった」と思わせてくれるはずです。
個性豊かなキャラクターたち
最後に、『鴨川ホルモー』を語るうえで欠かせないのが、ホルモーに参戦する登場人物たち。
ちょっと不器用で真面目な安倍くんを筆頭に、
安倍くんが葵祭のバイトで最初に知り合った高村くん、
無口で無愛想で掴みどころのない楠木ふみさん、
安倍くんが新歓コンパで一目惚れする早良京子さん、
脇を固めるキャラクターたちも一癖ある個性派ぞろい。
見た目からはわからない、意外な一面やギャップもあって、読んでいて飽きません。
彼らが繰り広げる軽妙な掛け合いや、時には衝突してしまう姿は、どこにでもいそうな普通の大学生で、「自分にもこんな時期があったな」と思い起こすことがあるかもしれませんね。
そして何より、最初はバラバラだった登場人物たちが「ホルモー」という一見馬鹿げた競技に本気で挑み、試合や仲間との関係を通じて成長していく姿は、「仲間とともに何かに夢中になって取り組むことの素晴らしさ」を感じさせられるのです。
おわりに
『鴨川ホルモー』は、京都という魅力的な舞台を背景に、不思議で滑稽な競技と大学生の青春を描いた一冊です。
笑い、驚き、そしてちょっと感動できるこの物語は、現実の京都の街が、まるで異世界の入口のように感じられるかもしれません。
現実と幻想が混ざり合う『鴨川ホルモー』の世界に浸ってみませんか?
あなたの横にも、見えない「オニ」がいるかもしれません。
『鴨川ホルモー』と同じく、京都の街を舞台とした小説7作品を紹介しています。
どれも京都の街や風情が感じられる作品ですので、ぜひご覧ください。
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