京都で魅了された絵画と祇園祭宵山のアート空間

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祇園祭の夜
京都フリー写真素材

夏の京都の風景を語るうえで、欠かせないのが祇園祭。賑わう四条通で食べ歩くのもいいし、山鉾の迫力にもワクワクします。これも十分楽しいのですが、“屏風祭”という別の楽しみ方があるのをご存じでしょうか。山鉾町の旧家・老舗が、古くから所蔵する貴重な美術品・屏風・調度品などを各家で飾り、公開しているのです。今回取り上げる小説では、この屏風祭が物語のカギを握る場として描かれています。

目次

山鉾町に宿る美意識と屏風祭の世界

屏風祭は、祇園祭の宵山の時期に合わせて開かれる町家文化の粋ともいえる催し。家の中に大切にしまってある屏風や美術品を通りに面して一般公開することで、町全体がアート空間になる。観光客が山鉾に集まる裏で、幻想的で静かに行われるこの催しが、物語の重要な舞台になります。

物語は、出産をまじかに控え、東京から京都にやってきた女性が主人公。彼女は絵の目利きとしての感性を持ち、やがてとある無名の女性画家の作品が心に刺さります。人との距離の取り方や言葉の裏に意味を持たせる京都ならではの人間関係に戸惑いながらも、彼女は自分の直感を信じて、京都の画壇に挑んでいきます。

無名の画家を世に送り出すために、彼女が選んだ勝負の場が“屏風祭”。町内でもひときわ目立つ大きな町家に展示された睡蓮の屏風。無名の画家が描いたその絵を通じて彼女が見せようとしたのは、技術や権威ではなく、作品そのものが持つ「心を動かす力」です。

外の喧騒を離れ、静けさの中にふわりと浮かび上がる睡蓮の絵。この美しい描写が印象に残ります。

京都に息づく美と覚悟の物語

祇園祭り山鉾巡行

京都は古くからの文化が根付き、風情のある街並みや名所も数多く残された観光地としても人気の街です。でもその反面、余所から来た人が入り難いような閉鎖的な土地柄というイメージがあるかもしれません。

この物語では、美しい京都の姿だけではなく、ちょっとネガティブで独特な京都の慣習や空気感もちゃんと表現しながら、その中で逞しく前に進む女性の姿が丁寧に描かれています。そこには京都人にはわからない、「異邦人には異邦人なりの京都」があるように感じます。

主人公は、他者との関係にどまどいながらも誠実に向き合い、やがて京都という土地と、そこに生きる人々との間に少しずつ理解を築いていく。そのプロセスは、単なる成功物語ではなく、「自分は何を信じて進むのか」という問いを通して、読む人に静かに響いてくるのです。

絵画に詳しくなくても、京都に住んでいなくても、この小説の世界には誰もが一度は感じたことのある「ひとつの信念にかけてみる勇気」が詰まっています。それがこの物語の、最大の魅力だと思います。

今回の小説は・・・

今回取り上げた小説は、第6回京都本大賞受賞作である、原田マハさんの『異邦人(いりびと)』。東京から京都へ移り住んだ女性が、無名画家の才能に惹かれ、伝統と格式の中で自ら信じた作品を世に出そうと奮闘する姿を描いた、美術と京都の空気感が織りなす物語です。

祇園祭の熱気とは別の京都の魅力を、ページの中でじっくり味わってみませんか。

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