宮島未奈 成瀬は天下を取りに行く|成瀬のぶれない姿に励まされる

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この夏を西武に捧げる

「この夏を西武に捧げようと思う」

宮島未奈さんの『成瀬は天下を取りに行く』はこの一言から始まります。

2024年本屋大賞を受賞して話題にもなったし、物語の舞台が滋賀県だと知ったこともあって読み始めたのですが、もうこの最初の一節から、いい意味で意表を突かれました。

表紙には西武ライオンズのユニフォームを着た女の子が描かれているのに、その“西武”がプロ野球チームではなく百貨店の“西武”だという、ちょっとした違和感。

でも、直感的に“面白そう”と思えたのです。

読み心地チェック
  『成瀬は天下を取りに行く』

ご当地度 :★★★★
非日常度 :★☆☆☆☆
ほっこり度:★★★★☆
一気読み度:★★★★☆
余韻の深さ:★★☆☆

人に優しくて大津愛にあふれた成瀬。彼女の純粋さと行動力に圧倒されてしまう。どこまでも真っ直ぐで爽快感のある物語です。

野球ならば、応援グッズを片手にライオンズをとことん追いかける、みたいな物語もイメージできるけれど、百貨店に夏を捧げるって??

読み進めるうちに、ちょっと変わった行動に映るけれども、自分に真っ直ぐな主人公の姿に、どんどんハマってしまいました。

主人公の成瀬あかりは、自分の思うままに突き進む10代の女の子。人になんと思われようと、自分の納得感を大事にするタイプで、他人から見ると「変わっている」「関わりたくない」と映ることも多い。

でも、好奇心の強さや、気になったらすぐ行動に移す姿は、どこか憎めない魅力がある。

物語の序盤は、2020年に閉店した西武大津店が舞台。地元テレビ局が閉店までの1か月間、店内から生中継をすると聞きつけた成瀬は、百貨店へ毎日通うと宣言します。

目的はただひとつ、「テレビに映ること」

誰かに声をかけてほしいわけでも、目立ちたいわけでもない。

なぜそんなことをするのか、彼女なりの理由はあるのだけれど、やはり謎。

謎なんだけれども、「行かずにはいられない感じ」は、妙に伝わってきます。

それにしても、彼女の行動は突拍子もないものばかり。200歳まで生きると言い出したり、大津にデパートを建てると本気で語ったり、髪がどこまで伸びるかを試したくて剃ってしまったり。

漫才でM-1を目指すかと思えば、競技かるたにも挑戦する。進む方向は一見バラバラで、いったい何をめざしているのかと思えるけれど、不思議と一本の軸が通っているように感じられるのが成瀬らしさなのです。

新しいことを始めるとき、少し腰が重くなる瞬間ってありますよね?

「できないかな」「無理かもしれない」と考えてしまうこともある。「何の意味があるの?」と思うこともある。

でも成瀬はそんなことは考えません。自分がやりたいと思ったらやる。

純粋というのか、清々しいというのか。自分がやりたいなら、ゴチャゴチャ考えずにやってみたらいいじゃないっていう感じです。

人に合わせる必要もないし、やらない言い訳をする必要もない。もし上手くいかなくても、その結果を次の一歩に活かせばいい。

ほんとにその通りなのですが、これがなかなかできないのですよね。

『成瀬は天下を取りに行く』は、女の子の青春物語だけれども、甘ったるい感じではなく、なんにでもチャレンジする姿は、どこか心に響くものが残ります。

成瀬の行動力や純粋さが、ちょっと羨ましくもあるし、「やりたいことは始めてみよう」「まだできることはある」と、周りを励ましてくれているようにも感じます。

大の大人が10代の女の子に励まされるって…と思わなくもないけれど、それぐらい成瀬には魅力があります。

どこまでも徹底的にチャレンジする成瀬。いつかきっと大きなことを成し遂げるのでしょうね。

彼女がこれからどんな道を歩むのか、物語の続きが気になります。これからの成瀬に期待です。

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