今回の「ほんのひとこと」は、有川浩著『阪急電車』から。
ほんのひとこと
価値観の違う奴とは、辛いと思えるうちに離れといたほうがええねん。
価値観の相違
自分の価値観は大切にしたいです。
人の影響を受けて良い方向に変わることもあると思いますが、譲れない価値観もあるはず。
もし、どうしても相手との価値観の違いが埋められないと思った時、それでも付き合いを続けますか?
この「ほんのひとこと」は、『阪急電車』の物語で、ママ友(といってもイヤイヤの付き合い)との価値観の違いに苦しむ主婦に、たまたま同じ電車に乗り合わせた女子大生がかけた言葉です。
価値観の違う奴とは、辛いと思えるうちに離れといたほうがええねん。
阪急電車 文庫本 P168 より引用
無理に合わせて一緒におったら、自分もそっち側の価値観に慣れてしまうから。
人付き合いって難しいです。
ほんとに難しいのですが、付き合い続けることが悩みの種になってくると、ストレスが溜まる一方。
物語に出てくる主婦は、気乗りしない付き合いのせいで、電車内で気分が悪くなってしまいます。
体調に異変が生じてしまうほどのストレスはもちろんよくないのですが、それよりも、知らず知らずのうちに、自分の価値観がイヤな相手の価値観に染まってしまうって怖くないですか。
気がついたら、あれほど嫌だったものが、なんとも思わなくなってしまう・・・。
そんなことになる前に、「さっさと距離をあければいいやん!」と誰しも思うところですが、そう単純ではないのが人間関係なんですよね。
しんどくても、面倒でも、どうしても切れない関係もあるのかもしれません。
でも、よくよく考えると、「どうしても切れない」と自分が思っているだけってこともあるのでは?
自分から距離をあけたことで、周りから自分の方が悪者扱いされるんじゃないかと勝手に勘ぐったりとか。
それがイヤで、相手の方が離れていくのをじっと我慢しているとか。
「辛いと思えるうちに」というのは、まだ自分の価値観が保てているということ。
だから、「少し離れてみるのがお互いにとって良いことかも」と言いたかったのではないでしょうか。
案外、相手も同じように思っているかもしれません。
『阪急電車』の紹介
この物語は、兵庫県を走る「阪急電鉄今津線」が舞台。
宝塚駅から西宮北口駅までの8駅、およそ15分の車内で、偶然乗り合わせた人と人との繋がりが綴られています。
駅ごとに展開される物語には、恋愛あり別れあり、イヤな現実を突きつけられ、時には厳しい言葉もでてきますが、見知らぬ誰かの言葉に勇気をもらい救われる主人公がいます。
そして、その主人公が、次の物語の主人公に勇気を与える。
こんなふうに、それぞれの主人公の勇気がつながって、みんなが次の一歩を踏み出していく、ほのぼのと温かい物語です。
主人公どうしの偶然の出会いも絶妙ですし、最後まで心地よい気持ちで読み進められますよ。
クスッと笑える痛快な場面もあり。