望月麻衣さんの『京都寺町三条のホームズ』シリーズを読み始めたのは、この作品が「京都本大賞」受賞作と知ったのがきっかけでした。
本屋さんでパラパラとページをめくってみると、どうも骨董品店が物語の舞台のよう。私自身、骨董とか美術品には縁遠くて、知識も皆無。
最初は「面白いのかなあ」と思いながら読み進めたのですが、意外にハマってしまったのです。
いわゆるミステリーや恋愛というジャンルに収まりきらない、それぞれのいいところが、いい感じに混ざり合って、“ちょっといい話”がたくさん詰まったシリーズ。
京都の町並みと、そこに暮らす人とモノの物語が楽しめます。
『京都寺町三条のホームズ』
ご当地度 :★★★★★
非日常度 :★★☆☆☆
ほっこり度:★★★★☆
一気読み度:★★★★☆
余韻の深さ:★★★☆☆
有名な観光名所も含め、随所に京都の実在の場所が登場する、観光ガイドのような小説。ただの観光ガイドではありません。骨董にまつわる謎解きや恋愛要素も盛沢山のエンタメ物語です。
京都の寺町三条にある商店街。そこにひっそりと佇む、骨董品店「蔵」が物語の舞台です。
この物語を読み始めてまず「いいなあ」と思うのが、このお店の空気感。外の商店街は観光客や買い物客で賑やかなのに、一歩お店に入ると、時間がゆっくり流れているような静かな空間が広がっています。
お店の奥にさりげなく置かれた貴重な品々や、店内に差し込む光。そして骨董品店なのに、なぜか客にそっとだされるコーヒーのいい香りが漂ってくる。そんな心地よさが、この物語の大きな魅力です。
ここで活躍するのが、鑑定士見習いの「ホームズ」こと清貴くんと、女子高生の葵さんです。 清貴くんは、モデルみたいなイケメンなんですが、中身がただ者じゃないんです。とにかく観察眼がすごすぎて、初めて会う人は引いてしまうくらい。
物の価値だけでなく、相手が何を考えているかまで見抜いてしまう。そのキレ味鋭い鑑定シーンは、読んでいてスカッとします。
そんな彼が、ひょんなことからバイトを始めた葵さんと一緒に、持ち込まれる品物の謎を解いていくのですが、二人の関係がまたいいんです。
最初はちょっとぎこちない、付かず離れずの距離感。それが物語が進むにつれて、少しずつ変化していく。まさに王道の恋愛ストーリーなんですが、ほのぼのとしていて素直に応援したくなる。そんな絶妙なさじ加減です。
こんな二人の謎解きを読んでいて思うのは、「古いものには、必ず人の想いが宿っている」ということ。 古いお茶碗一つにしても、それを作った職人さんや、大事に使ってきた誰かの歴史があって、それが今の持ち主に繋がっている。
鑑定を通じて、単に「古い物」と思っていたものがが「大切な宝物」に変わっていく場面には、なんだか温かな気持ちになります。
私はこれまで骨董品なんて自分には関係ない世界だと思っていたのですが、このシリーズを読んでから、家にある“ちょっと古いもの”が急に気になってきました。
価値があるのかどうかもわからないし、家にあることさえ忘れていたけれど、「そういえば昔から家にあるなあ」という物が、あなたの自宅や実家にもあるかもしれませんね。
シリーズを通して京都の名所もたくさん出てきますが、どれも今の京都の日常として描かれているので、読んでいて本当に街を歩いているような気分になれます。
「今度、寺町をぶらぶら歩いてみようかな」とか「あの神社の境内を見てみたいな」とか。読み終わる頃には、きっと京都に行きたいと思えるはずです。
『京都寺町三条のホームズ』は、現在も継続してシリーズ化されている作品で(2026年4月現在:第24巻まで)、シリーズ第1巻が、2016年度京都本大賞を受賞しています。
京都・寺町三条の骨董店「蔵」を舞台に、品物にまつわる小さな謎や依頼人の心の機微を描く日常ミステリーシリーズ。観察眼の鋭い“ホームズ”こと家頭清貴と、東京から来た女子高生・真城葵のコンビが、骨董品に隠れた人の思いを丁寧に紐解きます。
表紙からも感じられるように、本格的な推理小説や恋愛小説とは違い、もっと気軽に楽しめるライトノベルに近いイメージの作品。まずは第1巻を手に取ってみてください。あとは、自分のペースでハマっていけます。
この小説、京都のライトミステリーを集めた「京都が舞台の日常ミステリー5選」でも取り上げています。よろしければご覧ください。









