川上徹也『あの日、小林書店で。』~ 小さな本屋が教えてくれた“仕事の原点”

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毎日の仕事や暮らしの中で、ふと「このままでいいのかな」と立ち止まる瞬間ってありませんか。そんな時、誰かの“ひとこと”や“出会い”が、自分の見方を少し変えてくれることがあります。

『あの日、小林書店で。』は、兵庫県尼崎市に実在した小さな書店を舞台にした物語。出版取次会社に勤める新人女性が、書店主との出会いを通して“仕事”や“生き方”への向き合い方を見つけていく――静かで温かい物語です。

読み終わるころにはきっと、自分がいる場所で”次の一歩”を踏み出そうと思えるはずです。

目次

街の本屋で見つけた仕事の意味

PCで仕事

主人公の大森理香は、出版取次会社の大阪支社に配属された新入社員。出版社や本屋に特別な思いがあったわけでもない彼女は、「なんで私が営業なの?」「なんで大阪なの?」――そんな思いを抱えながら、自分がここにいる意味を見つけられずにいました。

そんな中で出会ったのが、尼崎・立花商店街の外れにある10坪ほどの「小林書店」。店主の小林由美子さんは、街の人と本をつなぐことを大切にしてきた女性です。

自分のできることを一生懸命にやる由美子さんの姿、人との縁を大切にして、「どうすれば喜んでもらえるのか」といつも考えている由美子さんの言葉に、理香は、「仕事」や「人との関わり方」を少しずつ見つめ直していきます。

”今いる場所でできること”を見つける

カフェで読書

この物語の魅力は、なんといっても由美子さんが語る体験談。実在した小林書店での出来事をモデルにした、リアルなエピソードが多く、変に誇張したお話とか、薄っぺらい理想的なお話ではなく、ほんとに厚みのある生のお話。

入社して間もない理香は、自分に自信が持てず、「自分より向いている人がたくさんいたはずなのに、なぜ自分がここにいるのだろう」と迷います。

そんな彼女に、由美子さんは決して押しつけることなく、ただ静かに寄り添いながら、「仕事も人も、いいところを探して、ちょっとずつ好きになったらいい」「自分が弱みと思っていることが一番の強みになる」と、「今いる場所でできること」を見つける手助けをしてくれるんです。

由美子さんの話を聞きながら、理香は、最初に感じていた「ここは自分の居場所ではない」という思いが、少しずつ「この場所にも、自分の役割があるかもしれない」へと変わっていきます。

でも、誰かに言葉をもらったからって、すぐに自分が変わるのって難しいですよね。

もちろん、由美子さんの人柄もあるし、一言一言が胸に沁みるんですが、この物語を読んでいて感じたのは、やっぱり、自分が”誰かの言葉や、小さな出来事に素直に心を動かせるかどうか”が大切なんだということ。それが少しずつでも前に進む力になるんだと思います。

大きなことでなくても、「目の前の人を大事にする」「自分にできることをやってみる」――その積み重ねが、自分を成長させていくんです。

仕事をしていると、「自分に向いていないのでは」「この選択で良かったのか」と感じる時がありますよね。そんな時こそ、由美子さんのように“今いる場所を見つめ直す”視点を持てたら、少しだけ心が軽くなるのかもしれません。

“居場所”の見つけ方を教えてくれる

真っ白な本

理香のように、「自分の居場所がわからない」と感じることは誰にでもありますよね。でも、この物語はそんな時に、「今いる場所で小さくても動いてみる」ことの大切さを教えてくれます。

たとえば、誰かに声をかけてみる、感謝を伝えてみる、自分が好きな本を勧めてみる――その一歩が、思いもよらない出会いや変化につながるかもしれない。

『あの日、小林書店で。』は、私たちが日々の生活の中でできることは、小さくても確かにあるのだと、そっと背中を押してくれる感じがします。忙しさに流されがちな日常の中で、「自分の仕事にも、ちゃんと意味がある」と思わせてくれるような、静かな力を持った物語です。

実際の小林書店は、2024年に惜しまれつつ閉店しました。店内には地域の人が気軽に立ち寄る“居場所”のような空気が流れていたそうです。

立花商店街は、JR立花駅から少し歩いた先にある昔ながらの通り。八百屋さんや惣菜店などと並んで小林書店がありました。物語の中で理香が店を訪れるシーンでは、商店街を歩く人々のざわざわした感じや、夕暮れ時の雰囲気が目の前に広がるようで、どこか懐かしく感じられます。

「小林書店」が閉店してしまったのは残念なんですが、でも、それは決して悲しい終わりではありません。店がなくなっても、そこにあった“想い”とか“人とのつながり”は、ちゃんと残っていくと思うからです。

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