甲子園の神整備と人の成長がリンクする温かい物語

当ページのリンクには広告が含まれています。
甲子園球場

「阪神甲子園球場」

阪神タイガースの本拠地であり、高校野球の聖地。私もタイガースのファンとして、何度も足を運んできた場所です。そこに吹く浜風、響くバットの音、ファンの大声援、たまに強烈なヤジ。いつ行ってもテンションが揚がります。そして、スタンドから見る完璧に整備されたグラウンドの美しさは感動ものです。

今回紹介する小説『あめつちのうた』は、この球場を整備するグラウンドキーパーのプロ、阪神園芸さんの物語だと知って読んでみました。

目次

グラウンド整備の奥にある情熱

甲子園球場の試合中、突然の雨が降った後でも、まるで魔法のようにグラウンドが整ってすぐに試合が再開される。野球ファンなら誰もが一度は驚いたことがあるんじゃないでしょうか。

実際に甲子園に行くたびに目にしていた阪神園芸さんの姿——トンボがけ、水まき、ライン引き。それはただの作業ではなく、彼らの誇りであり、野球への敬意であることが、この物語を通して伝わってきます。

彼らの仕事はただの整備ではないんです。天気を読み、選手の動きや安全までを考え抜いてグラウンドを仕上げる。こういうのを“プロの仕事”と言うんだと、読んでいて背筋が伸びる思いでした。あの一塁線の白さにも、芝の緑にも、人の手と気持ちが宿っているんです。タイガースの試合前にもうひとつの勝負、阪神園芸さんとグラウンドとの真剣勝負が始まってるような気がします。

雨降って地固まる

甲子園球場

この物語には、「雨降って地固まる」と言う言葉が、じんわり染みこんでいます。登場人物たちの人間関係や挫折、葛藤、そしてそこから立ち直って成長する姿が、甲子園のグラウンドと重なるんです。グラウンドに降る雨は、時に足元をぬかるませ、視界を曇らせるけど、きちんと整備すれば、最後には地面がしっかりと固まっていくような感覚です。

阪神園芸さんの仕事は、雨と切っても切れない関係にあります。雨が降ればグラウンドは泥だらけになり、試合の続行も危ぶまれる。でも、そんなときこそ彼らの真価が問われる場面。どうすればベストな状態に仕上げられるかを冷静に判断し、仲間と協力してグラウンドを整える。そこに派手さはないけど、いざというときにどう動くか。ほんとに実直な仕事ぶりなんです。

グラウンド整備の現場では「水を入れて土を締める」という言葉があるそうで、物語のあらゆる場面で「水を与えることの大切さ」が語られます。でもこれは、グラウンド整備だけに限った話じゃなくて、どんな仕事でも、日常の生活の中でも大切なんですよね。

主人公のお母さんが、こんな風に言うんです。

「大雨が降って、絶望的な気持ちになるけどね、地面は──大地は雨の前よりもさらに強くなる」
(中略)
「いろいろな災難や困難があるけれどね、それを切り抜ければ、もっともっと人間として強くなれる。空を見上げると、きれいな虹がかかってる」

「あめつちのうた」 Kindle版 P190

誰にでも苦労することはあるし、悩みもあるけど、そのときに支えになるのは、やっぱり”人の力”なんです。誰かを支えたり、支えられたりする関係もまた、土に水をやるように少しずつ育っていくんだと感じられる物語です。

阪神タイガースの選手が引退する時、こんな風に挨拶します…「阪神園芸の皆様ありがとうございます」…この物語を読んでいると、本当にそんな気持ちになれます。

甲子園を支える人々の物語

浅倉宏景さんの『あめつちのうた』は、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場を舞台に、阪神園芸のグランドキーパーたちの仕事と人間模様を描いた物語。雨にも負けず、試合を支える姿は、まさに職人技そのもの。地味にみえるかもしれないけど、じんわりと沁みる一冊です。「甲子園の神整備」と呼ばれるグランドキーパーの技を垣間見ることもできるこの小説は、2022年第1回「ひょうご本大賞」受賞作品です。

次の観戦前に読んでおくと、甲子園の景色がちょっと違って見えるかもしれません。阪神ファンだけでなく、すべての野球ファンに、是非読んでほしいです。

Sponsored Link

Kindle Unlimitedで、もっと読書を楽しみませんか?

「Kindle Unlimited」は、幅広いジャンルの200万冊以上が読み放題になる、Amazonの読書サービス。

初めてなら30日間無料で利用でき、それ以降も月額980円で、好きなだけ読書が楽しめます。

あなたも「Kindle Unlimited」で、新しい本と出会いませんか。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次