中学三年生。あなたはどんな子供でしたか?何をしてましたか?
津村記久子さんの『エヴリシング・フロウズ』は、どこにでもいそうな普通の中学生の日常を描いた物語。
自分の中学の頃を思い返しながら、なつかしいような、どこかちょっと気恥ずかしいような、そんな気持ちになれる物語です。
『エヴリシング・フロウズ』
ご当地度 :★★★☆☆
生活実感 :★★★★☆
ほっこり度:★★☆☆☆
一気読み度:★★☆☆☆
余韻の深さ:★★★★☆
自分が中学生だったころを思い出しながら、じっくり読みたい物語。今の中学生たちの等身大の姿に、彼らの今後を自然と応援したくなります。
中学3年生のころって、平日は学校と塾や習い事で何かと忙しいし、進路のことで頭が痛かったり、友人関係の微妙な距離感に悩んだり。
おまけに反抗期で、親の言うことにいちいちイラついて、家ではなんとなく口数が少なくなったり横柄な態度をとったりもする。そのくせ、頼み事をするときだけは「子供」を強調する。
この物語は、そんな誰もが覚えのある、中学生たちの等身大の一年間を追いかけます。
読み進めながらまず感じたのが、「今の中学生って、どこか大人びてない?」という印象でした。大人というか、私の高校時代のような感じ。
もちろん、新学期のクラス替えで「今年はどんなやつと同じクラスになるんやろ……」と、期待と不安でそわそわしたり、席替えのたびに隣になったクラスメイトが妙に気になったり。
そんな光景は変わらないのですが、彼らが当たり前のように放課後にファミレスに集まってご飯を食べたり、深夜にふらっとコンビニへ買い物に出かけたりする姿を見ていると、この物語が中学生の話ということを忘れそうになるのです。
そもそも、私の中学時代って、ファーストフード店もコンビニも今ほど街に溢れていませんでした。通学途中にちょっと寄り道なんて発想すらなかったし、ましてや夜中に気軽に行けるような場所でもなかったのだから、時代の流れと言ってしまえば、そうなのですが。
子供でもない、かといって大人でもない。そんな狭間にいる彼らですが、大人が思っている以上に、本当にいろんなことを心の奥で考えているんですよね。
そして、友達や周囲の大人たちのことを、びっくりするくらいよく見ている。相手のちょっとした口調の変化や、一瞬の表情を敏感に感じ取ってしまう。
誰かと一緒にいることで、なんとか自分の居場所を確保して安心したいから、孤立して浮いてしまわないように、必死に変な空気を読もうとしたり、本当は言いたいことがあるのにグッと飲み込んで笑顔を作ったり……。
それが時に、余計な誤解を生んだり、深い悩みに繋がったりもするのだから、悩ましいところです。
この多感な時期に、「誰に何を言われても、私は私のやりたいことをやる!」と割り切るのって、想像以上に難しいことなのかもしれません。
けれど、物語に登場する中学生たちは、そんな窮屈なしがらみや、思い通りにならない不自由さとか不公平さの中でも、不器用なりに友達のことを一生懸命に想い、自分の不確かな将来に向き合っていきます。
だってさ、せっかく仲良くなったのに、三年間とか期限付けられてその後ばらばらにされるとかさ。中学生やからって
『エヴリシング・フロウズ』 単行本P302より引用
確かに、大人になれば自分で所属する場所を選べますが、中学生は「義務教育の三年間」に強制的に区切られる。
けれど、この言葉のように「三年間でバラバラにされるなんて不公平だ」と、理不尽に憤りを感じられるということは、それだけ彼らにとって、嫌なことも楽しいことも含めて、充実した中学生活だったのだろうなと思えます。
この物語を読んでいると、中学時代の忘れていた出来事が浮かんできたり、今は繋がりがなくなってしまったけれど仲の良かった友達を思い出したりもしました。
当時は、楽しいこともたくさんあったけれど、今から振り返ると些細に思えることを、大げさに考えていたこともあったような気もします。
津村記久子さんの『エヴリシング・フロウズ』の舞台は大阪市大正区。
海遊館やIKEA、めがね橋など、大正区に実在する場所が物語の背景に登場するのに、大正区は、”僕の住む区”としか書かれていない。あえてなのだろうけれど、なぜなのか……。
「大阪が舞台のおすすめ小説10選」でも、この物語をピックアップしています。大阪各地の雰囲気や人の温かさが感じられる作品を選んでいますので、あなたのお気に入りの物語を見つけてください。










