森見登美彦『四畳半神話大系』~ 京都の街で思う“もしあのとき”

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京都の夕暮れ

学生時代って何にでもチャレンジできるし、選択肢もたくさんありましたよね。誰でもいろんな選択を重ねて今があるわけですが、後から振り返って、「もしあのとき別の選択をしてたら…」と思ったことはありませんか?

そんな“もしも”を描いた青春物語が『四畳半神話大系』。京都の学生生活が舞台で、ユーモアとちょっと切ない感じが混ざり合う物語です。

読んでいるうちに、学生時代の自分や、バカ騒ぎした仲間とかを懐かしく思い出します。

目次

京都の大学生を描くパラレルワールド

糺の森

物語の主人公は、京都の大学に通うちょっと冴えない男子学生。彼はいつも「バラ色のキャンパスライフ」を夢見ているのに、どうも空回りしてばかり。

そんな彼が、「もしあのとき別のサークルに入っていたら?」と考えた瞬間から、物語は”パラレルワールド”のように展開していくんです。

映画サークルに打ち込む世界、ソフトボールサークルに入る世界、そしてちょっと怪しげな秘密機関に巻き込まれる世界まで——どれも奇想天外で笑えるけど、どの道を選んでも結末はどこか似ている。

最初に読んだ時には、同じフレーズが繰り返し出てきて、”あれ?”ってなったけれど、その「どこまで行っても同じ場所に戻ってくる感じ」に、思わず笑ってしまう。

古くて狭い下宿の匂いとか、なんとなく湿ったような空気とか、京都の吉田や下鴨あたりの、ちょっと昔の学生街の雰囲気が、いい感じに描かれています。 

キャラクターのクセとテンポにハマる

レトロな宿

この物語、登場人物たちのクセの強さとか、語りのテンポがいいんです。学生時代の面白おかしい日常のドタバタした感じがあって。

主人公の友人・小津は、まるで悪魔のように人を巻き込む天才。謎めいた先輩・樋口は、奇妙な助言をしながらもどこか温かい。そしてヒロインの明石さんは、しっかりしているかと思いきや少し不器用。

彼らの語り口は、ちょっと自意識過剰気味で笑えるけれど、その言葉が強がりというか空回りする感じで、なんとも微笑ましい。

そんな彼らの”パラレルワールド”ですが、印象的だったのは、「どの世界を選んでも、結局は同じ気づきにたどり着く」という展開。

”パラレルワールド”の物語って、羨むような世界が待ってたとか、逆に予想外の状況に追い込まれたみたいな、全く別の世界が広がるという物語が多いイメージだったんで、ちょっと意外でした。

人生の選択って数々あるけれど、最後は自分の意志で選ぶんだから、どの選択をしたとしても、思っているほど劇的に変わるわけじゃない、正解とか不正解があるわけじゃない。

大切なのは、何かの選択を重ねた結果の“今の自分”をどう受け止めるか。そんなメッセージが、物語の中に込められているのかなと感じます。

私は過去の自分を抱きしめはしないし、過去のあやまちを肯定したりはしないけれども、とりあえず大目に見てやるにやぶさかではない。

四畳半神話大系 Kindl版 p.346

この物語を読んだ後には、「あのときの選択も悪くなかったな」と、ちょっと前向きな気持ちになれるはずです。

読むと少し気持ちが軽くなる物語

鴨川デルタ

『四畳半神話大系』は、京都の街を背景に、ドタバタして騒がしい日常だけれど、何とも言えない楽しさのある学生時代が描かれる物語。そして、自分の選択は“失敗”じゃなくて“ひとつの道”として受け止められるような、あたたかい物語です。

もしかしたら、これまでの自分に後悔とか心残りがあるかもしれないし、「もし違う道を選んでいたら」と思うこともあるかもしれません。でもこの物語を読んで笑っているうちに、そんな後悔が少し軽くなる気がします。

「ちょっと立ち止まりたいな」とか「どこかで選択を間違えたかな」なんて思うことがあれば、この物語を読んでみてください。きっと、「今の自分も悪くないな」と思えるはずです。

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