面白そうなお仕事小説がないかと探していて、本屋さんで偶然見つけたのがこの本。大阪のテレビ局が舞台となっている、一穂ミチさんの『砂嵐に星屑』です。
仕事をしていると、今の仕事に疑問をもったり、自分のキャリアを不安に思ったりして、ふと「このままでいいのかな」と立ち止まる瞬間がありませんか?
忙しい毎日の中で、こんな気持ちになったことのある人なら、この物語に共感できる部分があると思います。
『砂嵐に星屑』
ご当地度 :★★★★☆
非日常度 :★☆☆☆☆
ほっこり度:★★★☆☆
一気読み度:★★★★☆
余韻の深さ:★★☆☆☆
仕事の苦労や厳しさと、世代間の違いを描きます。シビアな話もあるけれど、関西弁のやり取りがそれを緩和して、どこかほんわかした雰囲気も漂います。
テレビ局が舞台というと、華やかな世界や、秒刻みで進行する番組の緊張感など、画面には映らない局の裏側の物語を想像していたのですが、ちょっとイメージとは違いました。
もちろん、視聴者は知らない、業界ならでは小ネタや空気感は散りばめられていますが、この物語で描いているのは、仕事をしていれば誰もが感じる、各世代の仕事観や悩みです。
若手・中堅・ベテラン、立場や世代によって、見えている景色も、抱えている悩みも少しずつ違います。仕事との距離感も人それぞれです。
お互いに理解できないこともありながら、完全に否定もしきれないし、ちょっと羨ましいこともある。
そんな感情が、季節ごとに異なる主人公のエピソードから、自然なかたちで現れています。
例えば、春の主人公・40代女性アナウンサーは、自分が若いころには絶対できなかったことを、平気でやる若い子を見て、「変わった子」と思ってしまう。
また夏には、後輩たちの成長を喜びながらも、自分がいなくても仕事は回るんだと、少し寂しい思いをする50代の報道デスクもいます。
年齢が上の世代は、若い世代の柔軟さに呆れることもあるけれど、「そんな割り切り方ができたら楽なのに」とも思っているし、下の世代は、経験を重ねた世代の慎重さや責任感を、もどかしく感じながらも、その重みをどこかで羨ましく思っているのです。
人それぞれ考え方は違うし立場も違う。得意なこともあれば苦手なこともある。でも、これがうまくハマって、ひとつの仕事が成り立つのだと、この物語を読んで、あらためて思います。
自分と同世代のエピソードでは、“あるある”と共感できる部分が多いだろうし、世代が違う主人公には、そんな考え方もあるのかと驚き半分と興味半分で読める物語です。
こんな風に書いていると、少し悲しげな物語に思えるかもしれません。でもそこは大阪が舞台。
シビアな話も中にはありますが、暗い物語ではありません。登場人物たちの会話だけで笑えてしまう、スッキリした物語です。
年齢や経験が違えば考え方は違っていてあたりまえだけれど、誰にでも過去の失敗もあれば、将来への不安もある。
でも、この先どうなるかなんて誰にもわからない。他人と比べ過ぎずに、自分らしくやればいいのだと思える。
『砂嵐に星屑』はそんな物語でした。
この小説、大阪を舞台にした小説をまとめた、「大阪が舞台のおすすめ小説10選」でも取り上げています。よろしかったらご覧ください。










