吉野万里子 階段ランナー|京都駅大階段で見つけた確かな想い

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京都駅大階段。駆け上がった先に見えるもの

あなたは「JR京都駅ビル大階段駈け上がり大会」をご存知でしょうか?

京都駅にある段数171段・高低差35mの大階段を舞台に、4人1チームで、階段を駆け上がる合計タイムを競う大会です。

今の京都駅舎がオープンした翌年から毎年2月に行われる、京都の冬の風物詩的なイベントで、毎年なかなかの盛り上がりを見せています。

今回紹介する、吉野万里子さんの『階段ランナー』は、この大会にひょんなことから出場することになった、二人の高校生の物語です。

読み心地チェック
  『階段ランナー』

ご当地度 :★★★★
生活実感 :★★★★
ほっこり度:★★★★☆
一気読み度:★★★
余韻の深さ:★★★☆☆

  「読み心地チェック」の目安

京都駅の大階段をはじめ、実在の場所が数多く登場。実際に訪れて、生の雰囲気を味わってみたくなります。

世の中には、本当にいろいろな面白い趣味があるものですよね。

私がこの物語を通じて初めて知ったのが、「階段マニア」と呼ばれる人たちの存在。ちょっと気になってSNSを覗いてみると、急すぎる階段や、気が遠くなるほど長い階段、歴史を感じるレトロな階段など、愛好家の方々がお気に入りの階段写真をたくさんシェアしていました。

この物語は、そんな階段マニアである元先生が書くブログをきっかけに、二人の元教え子が仲を深め、「大階段駈け上がり大会」に参加するまでの姿を描きます。

物語の中心となる二人の教え子は、高校3年生の奥貫広夢と三上瑠衣。どこにでもいる普通の高校生に見えるのですが、実は人にはなかなか言いにくい悩みも抱えています。

広夢は、母親が起こしたとんでもないトラブルに見舞われてしまう。一方の瑠衣は、卓球で全日本選手権に出場するほどの実力を持ちながら、試合中のある出来事がキッカケで自信をなくしてしまう。

二人は先の見えない毎日で、これからどうしていいか分からない。どこか将来を諦めているようにも見えます。

そんな二人ですが、先生のブログを通して知る階段が、共通のアイテムとなって、気持ちが少し楽になり、どこか心が癒されていく。そんな変化が伝わってきます。

二人がお互いの事情を知る中で、少しづつ相手を意識し距離を縮めていく・・・、こんな流れは、恋愛ストーリーの定番パターンなのかもしれません。

でもそこに、ちょっとマニアックな階段の話題が絡んでくるのが、この物語の面白いところ。「なんでここで階段?」と、最初は斬新というか不思議な組み合わせに思えたのです。

ところが途中から、一見バラバラに見えるエピソードが、ちゃんと繋がっているように思えてきました。この物語は、二人がこれから進む道を「階段」に例えているのではないか?

階段って、つい登りたくなるお気に入りもあれば、「これは避けたいな」と思うしんどそうな階段もあります。真っ直ぐ上に伸びるものもあれば、らせん階段のように曲がりくねったものもある。

一歩一歩苦労して登る時もあれば、勢いで一気に駆け上がることだってありますよね。時には足を踏み外して、転げ落ちてしまうことだってあるかもしれません。

でも、階段の踊り場で少し休憩することもできるし、手すりに捕まることもできる。

そう考えると、彼らの道のりだって同じだなって思ったのです。

調子が良い時もあれば、最悪と思える時もある。しんどい時には立ち止まって休憩したっていいし、苦しい時には人を頼ってもいい。

自分の好きな道を選んで、自分のペースで一段ずつ登っていけばいいんだ。そんなふうに語りかけてくれている気がしてきます。

階段のゴールまでは遠くて険しくて、途中で諦めたくなることがあるかもしれないけれど、一段ずつ登っていけば、いつかちゃんと辿り着ける。

広夢と瑠衣の二人も、この先どんな辛いことがあっても、自分たちの目標に向かってマイペースで進んでいけるはず。

そんな風に、彼らの未来を応援したくなるラストが待っています。

吉野万里子さんの『階段ランナー』の舞台は、東京や横浜、鎌倉といった関東地域がメインです。物語の前半はほとんど京都の景色が出てこないので、「どこが京都舞台の小説なんだろう?」と思うかもしれません。

でも、一番の見どころであり、最高のクライマックスになるのは、やはり「京都駅の大階段」です。とんでもなく急で長い階段を駆け上がる彼らの姿を知れば、「これは間違いなく、京都が舞台の物語だ」と納得できるはずです。

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